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川の流れのように(第2話)

「この『沙悟浄』って漢字、ものすごくいやなんですけど」
悟浄の言葉が思わず丁寧語になってしまう。
「そうだな、どっからどう見ても、『沙悟浄』と書いてあるようにしか、見えんな」
それだけ言うと、三蔵も黙り込んでしまう。
妙な間が3人の間に流れた。
「どうやら、船の渡し守として悟浄がこの川の番人だったようですね。それで、ここ
で、旅を続ける主人公と仲間になるようです」
その話を聞くと、三蔵は人の悪い笑みを浮かべた。
「ほぉ、ということは、オマエがこの状況を打開してくれると、そういうわけだな?」
後ろを向き、そんなことは無いことがわかっていながら、悟浄にあえて話を振る。
「は〜い、せんせ〜、お坊さんが庶民をいじめてま〜す」
悟浄はおどけてみせる。
三蔵は「ふん」と、言って八戒から冊子を受け取ると、もう一度話を読み直した。
「どうやら、この話では、それぞれがそれぞれの場所で主人公を待つことになってい
るようだな。八戒もご多分に漏れることはなさそうだ」
「ええ?僕もですか?変な風に書かれていなければいいなぁ」
「そういう問題か?」
「結構気になりますよ。だって、自分と同じ名前の人がその昔に同じような旅をした
って事ですからね。それもだいぶ欠落しているところがあるとはいえ、一般に出版さ
れているとなると、誤解を受けることになるかもしれませんし」
「いや、それは大丈夫だろう、この冊子は斜陽殿で俺が直接三仏神から受け取った物
だからな」
「これって、旅行セットの一つだったん?」
あえて否定しないところから見ると、おそらくそうなのだろう。
「八戒はここにくるだいぶ以前に仲間になっているようだな。村の長老の娘と結婚し
ているが、妖怪であることを隠していたために、主人公との接触でそれが判明し、一
緒にいることができなくなり、主人公と一緒に旅をすることになったらしい。ただ、
八戒にしても悟浄にしても、やはりあらかじめ観音にあらかじめ運命を決められてい
たらしい。前世の業を引きずっているようだな。あいつら、こんな時代から同じ事を
やっていたのか・・・」
「悠久の時を過ごす人たちにとって、人間や妖怪なんて、所詮は戯れの相手でしかな
いのでしょうか?」
八戒は『同じ事』という言葉に少し表情を暗くした。
「けっ、んなの、くそくらえだ。少なくとも、俺達は俺達の意志でこの道を歩んでい
るんだろ?三蔵さんよ」
「当たり前だ」
「じゃあ、さっさとこの川を渡る手段を考えようぜ」
「だから、ここを渡すのはオマエだといっておろうが」
「え〜、だって、俺泳げないぜ」
「・・・」
「・・・マジですか?」
できるだけさらっと言ったつもりであったが、三蔵はその事実に沈黙。
八戒はかろうじて聞き返すことに成功した。
「おおマジ」
その顔にいつもの冗談の色はない。
「え〜〜っと、悟浄って、確か・・・」
「そう、かっぱの妖怪で〜す」
「それでも泳げないんですか?」
「水につかることはできるぞ」
「いばらんでいい」
「え〜、そうすると、悟浄はこの川を目の前にして、本の通りに僕たちを向こう側に
渡すどころか、ぶっちゃけた話、足を引っ張るって、言ってます?」
「きっついねぇ。でも正解」
「気色悪いことするな」
『大当たり〜』と、片目をつぶってみせれば、あっさりと三蔵が切り捨てる。
「んな事はその辺の女にでもしてやればいいだろう」
「あ、ベッドの上で泳ぐのはちょー得意だぜ」
「『ちょー』はヤメロ。ついでに今は毛ほどの役にもたたん」
「そんなわけで、今回の話で俺にいくら話を振られても、対処できないから、ヨロシ
ク〜」
そういって、悟浄も後ろの席に深く腰を下ろして寝に入った。
「どうしますか?」
「本も役に立たない、水に一番強いと思っていた奴はさらに役に立たないときたら、
急いでもしょうがないだろう。とりあえず日差しをさけて木陰にでもジープを移動し
たらどうだ?」
「良い案ですね、賛成です」
八戒も思わず苦笑してその案に従う。
「ど〜しましょうかねぇ・・・」
その八戒の言葉は三蔵の気持ちも代弁していた。

つづく・・・

2000 05/18 written by ZIN
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