「ん?」
頬を撫でる風が自分の紅く長い髪の毛を巻き上げ、鼻をくすぐる感覚に目を覚ますと、
なぜか他の奴らも気持ちよさそうに寝ていた。
寝ている顔にでも落書きしてやろうかと思ったが、あんまり気持ちよさそうだったか
ら、そんな気も失せた。
「青い空・・・ネェ」
気持ちの良いそよ風。
暖かい風。
あまりにも遠くまで見透かすことができそうなほど晴れ渡った青い空。
煙がその景色をじゃますることすらもったいなくて、いつも口元にある煙草を吸うこ
とすら忘れるほど、今日の天気は良かった。
気心の知れた仲間がいて、愛した相手がいて、目的を持った旅をして。
「結構充実してんじゃん」
目閉じても、いつも浮かんできたあの血なまぐさい光景はもう、浮かんでこない。
毎日が喧騒の日々であることには変わりないが、これほど意味の違う生活というのも
自分に有るのだと、今更ぼんやりと考えてしまう。
「んあぁ、腹へったぁ・・・」
横を向くと、大の字になって、寝言でまで空腹を訴えるガキがいる。
「・・・」
反対には寝顔が美しくて思わず襲いたくなる、今は閉じられた緑色の瞳を持つ恋人。
「ん・・・」
起きているときはくそ腹の立つ相手だが、寝顔は非常に美しい生臭坊主。
「こいつら、他の奴らにはこんな姿、ぜってぇみせねぇんだろうな」
そんな言葉をつぶやいてしまい、自分もそうだということに気がつき、思わず苦笑す
る。
「こういうのも幸せって言うんだろうな・・・」
悟浄は再び目を閉じた。
つづく・・・
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