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でも忘れた・・・

その事実は自分の心に深く突き刺さっていた。

数日前に自分の誕生日すら忘れたことを笑っていたが、そんなことはもうどうで
も良くなっていた。
悟浄は自分の誕生日は忘れてくれるなと言い、
まだまだ先の悟空は食べ物の話をするだけで、誕生日はいい日だと言うことに決
まったらしい。
三蔵は本気で悟浄と同じ月だと判明したのが納得行かないらしく、自分の誕生日
を帰るとまで言い出す始末。
自分の誕生日なのに、自分のコトじゃないことを考えているのは自分だけだった。

きゅうん・・・
ハンドルを握る手の力が抜けているのが解ったのだろうか?
ジープがさりげなく注意を促す。
自分が運転していることを忘れるほど考えに没頭してしまいそうになる。
このまま事故にでも遭って、自分を旅の供からはずしてほしいなんて事を考える。
それはできないことではないだろう。
前に三蔵が行ったことがある。
「自分の道を行けばいい。今はそれがただ重なっているにすぎない」
確かにその通りだと自分でも思うし、否定する必要性はどこにもない。
「いいんじゃねぇの?いっしょにいてヤじゃねぇんだろ?」
これは悟浄の言葉だ。
さりげなく昔の言葉を拾っても、彼らは決して自分を否定しないだろう。
そう生きて来たのだから。
唯一の自分と彼らの違いは、その一点にあると言ってもいい。
そう感じたのはやはり、自分のことを中心に考えているかどうかを目の当たりに
したからだろうか。



2000 10/12 written by ZIN
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