中に入ると、三蔵は相変わらず煙草をくゆらせていた。
窓際のいすに座り、視線は窓の外に向けたまま、特にこちらを向こうともしない。
街の中心に近いと言うこともあり、外の喧騒が中の静けさとくらべ、よけいに不
自然さをかもし出す。
閑散期というわけではないだろうが、なぜかこの宿には人がほとんど泊まってい
ない。
店の人の話によると、妖怪の暴走により、街と街の間を行き来する人が少なくな
り、どこの宿も似たようなものだという。
「静かですね」
「あぁ・・・」
窓が締めたままであるので、外の音はわずかにしか聞こえない。
自然と二人の会話だけが部屋に響く。
「開けるか?」
窓を顎で示し、その処遇を問う。
「いえ・・・かまいません」
「そうか・・・」
三蔵が特に動かないので、自分はベッドに腰掛け、話を始める。
自分のこれまでの存在。
花喃の自分の中での存在推移。
誕生日のこと。
大切にすると言ったのに守れなかった約束。
他の3人に比べて自分の意識の弱さ。
自分が存在していいか不安になったこと。
なによりも自分がこの仲間としていていいのかの疑問。
そして・・・
「夏が過ぎると、必ず思い出すんです。自分の生まれた日を認識することで、自
分の存在価値を考えてしまう」
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