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前へ前へ[08]

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「それで・・・俺に何を期待している?」
のべつまもない三蔵の言葉に八戒は、顔を上げる。
「俺に何かを期待しているのか?」
「いえ・・・そう言うわけでは・・・」
一度上げた視線をまたおろし、机の上を凝視する。
「俺が言いたいのは、オマエの雰囲気は奴らにも影響すると言うことだけだ。そ
して、それはこの旅の正否に関わる」
くゆらせた煙草の長さが短くなり、灰皿に残った灰と供に押しつける。
小さな灯火が消え、新しい煙草を懐から取り出すと、無造作に灯を付ける。
力強く吸い込むその煙は、三蔵の肺を充たし、残りのかけらが口から部屋へと吐
き出される。
「そんな・・・」
八戒はうつむいたままつぶやく。
「いくら馬鹿とはいえ、奴らもおまえの変化に気がついているだろう。特にあの
萬年色情エロがっぱは、俺とおまえが二人でいるのにすら不信感を持っているよ
うだからな。何を吹き込まれるか、気が気じゃないらしい」
ケッと、軽く肩をすくめて、三蔵は悟浄を揶揄する。
「おまえがこの世に存在することを誰か、否定したか?」
「いいえ」
「おまえが死んでも何も変わらない、おまえが生きれば、何かが変わる。そう言
ったとき、頷いたのは誰だ?」
「・・・僕です」
「だったら、よけいなことは考えるな。わざわざよけいなことで振り返るな。前
を向けばいい。後ろを見るなとはいわん。ただ、道が前にあるのに、後ろを向く
のは俺は好まん」
「・・・そうですね・・・ええ・・・」
「・・?まだ、納得がいかないのか?」
「そういうわけでは・・ただ・・」
がたりと自分の座っていたいすをならし、八戒の方に顔だけ向ける。
「ただ?」
「過去は実際に存在するんです。この手に、この記憶に・・・事実として」
「あぁ・・それはそうだな。忘れることはあっても、消すことはできない。それ
が過去であることは否定しない。だったら、おまえが納得行くように、考えてみ
るのもいいかもしれん。奴らにいくらか話を振ってみるのも一つの解決手段かも
しれんぞ。馬鹿だけどな」
あくまでも、他の二人を低次元に置きながら、参考にしろというのはあまりにも
三蔵らしい。
すこし、笑いながら、八戒は席を立った。
「解りました。ありがとうございます。少し考えてみますね」
「礼を言われるようなことはしていない。それよりよけいな考え方には、早く決
着を付けろ。俺が言いたいのはそれだけだ」
「はい」
入ってきたときと同じように扉は静かに開かれ、また閉じた。
「・・・」
一人になった部屋の中で、三蔵はまた煙草をふかし始めた。

2000 10/22 written by ZIN
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