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前へ前へ[09]

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考えてみる・・・
自分はどうであったか。
自分は・・・

部屋のドアを開け、がらんとした部屋を眺めたところで、何か考えが浮かぶはず
もなかったが、八戒はそうせずにはいられなかった。
過去を背負う。
言葉で言うのは簡単だが、口に出してみると、非常に重い。
そして未来は見えない分、暗い気がしてしまう。
自分の過去は簡単に拭える物ではないことを自分はよく分かっているつもりだっ
た。

宿の部屋に用意されたいすに座り、とりあえず、用意されていたポットから、コ
ップに水を注ぐ。
一杯目を一気にあおると、一息つけた気がした。
大きな息を吐き出し、自分が三蔵の前で異常なまでに緊張していたことを思い知
らされる。
それだけ、彼の存在は大きいと言うことか。
それとも、自分が勝手に萎縮していただけなのか。
すでに何ヶ月も旅をしているのに。
ましてや、会ってから何年も経っているのに・・・
未だに救ってもらったという意識が先に出てしまうのか?
こういうところを考えても、自分は過去を引きずる習性があるように感じる。
前を向いて生きることがいいのは十分に解っているつもりだし、それが一番なの
も、解っている。
だが、自分はまず過去を考えてしまう。
自分が何をしたか、自分がどう生きてきたか、そして、自分の存在がこの世にと
ってどういう物なのか。
考え方というのは、培われた物であり、どうしても基本的なところは、自分の思
いがでてしまう。
それを変えるわけには行かないが、こういう風に考え込み始めると、どうしても、
一人の世界に入り込み、そのうえ、回りにも迷惑をかけてしまう。
確かに自分が生きることで、悟浄は自分を取り戻し、悟空は、学ぶ場所を見つけ、
三蔵は安心して任せられる仲間を見つけた。
それは自分が生きたから、うぬぼれでも何でもなく、そう思える。
だが・・・

2杯目を注ぎながら、その水を見つめる。
流れる水はコップに流れ込み、そして、コップを充たす。
それは積み重なった自分の人生のようで、確かに量を重ねられる。
しかし、それはやがてあふれてコップからこぼれてしまう。
自分の経験として培った物がいつかあふれてしまったらといつも感じる。
それが故に、まだ余裕があることを常に確認してしまう。
このコップの大きさが自分はどのくらいなのか。
流れ込む水はどれぐらいの勢いなのか。
それを考えることに終わりなど見えるのだろうか・・・
『考えを終わらせろ』とは三蔵も難儀なことを言う物だ。
と、八戒は三蔵の言葉を思い出した。
終わらせられるのであれば、等の昔に終わらせている。
「悟浄にでも相談してみるか」
八戒は注いだ水を一口飲むと、立ち上がり、部屋を出た。

2000 10/24 written by ZIN
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