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「んったく、いつもいつも一人で抱え込みやがって」
悟浄はいすに腰掛けたまま、煙草をくゆらせ、腕を背もたれに脇を引っかけて垂
らす。
いらついているときのポーズである。
本人は気がついていないようであるが、何年も近くにいる八戒は悟浄がそうとう
いらついていることが解った。
「すみません・・・」
「謝ったからって、。どうにかなるわけじゃないだろう?」
「ええ、そうなんですが・・・申し訳ないと思って・・・」
語尾は消え入るような話し方で八戒は口を開く。
「んったく、これじゃ、俺がおまえをいじめているみたいじゃねぇか」
視線をはずし、天井を見上げ、いすをぎしぎしと傾かせる。
短くなった煙草の灰を器用に残しながら、上を向いたまま、しばし考える。
「そんなことはないです・・・」
八戒の声は消え入るようだ。
「なんで、まず俺じゃねえんだ?」
その声は非難していると言うよりも、だだこねているような口調であった。
自分に話してくれないと言うよりも、最初の相談相手が自分でなかったそのこと
自体が悟浄には納得がいかないらしい。
足をこつこつとならしたり、腕組みしてみたりしながら、八戒の言葉を待つ。
「三蔵が最初に、声をかけてくれたものですから・・・」
「それでも!」
少し声を大きくして悟浄は食い下がる。
「三年も一緒に暮らしたんだぜ?!いくらかは俺の方がアイツよりもおまえのこ
とを解っているつもりだぜ?それなのに、やっぱりアイツなのかよ・・・」
これこそ非難しているはずの悟浄の声が段々と力をなくしてゆく。
悲痛な叫びのようだ。
結局一番最初に相談されるべきなのは悟浄だと自分で思っていたのだ。
一番の存在は自分だと思っていた。
何でも最初でなければ行けない理由なんて無いはずなのに、それでも悔しいのだ。
八戒も自分が最初に選んだ相手を違った気がしていた。
街にはいるのに、悟浄と悟空を先に行かせたとき、悟浄の目が非難しているよう
に感じたからだ。
あの感覚は間違っていなかったのだ。
せめて悟浄を交えて話をするべきだったのかもしれない。
「いえ、悟浄には心配をかけたくなかったのです。ましてや、誕生日の話で、悟
浄はこれから誕生日を迎えるわけですし・・・」
「それを言ったら、アイツだって一緒じゃねーか!それをおれだけ・・むしろ、
心配はかけてくれた方がおれは嬉しいのに」
言うだけ言って、自分が情けないことを言っていることに気がついたのか、悟浄
は途中で言葉をつぐむ。
「くっ・・・」
窓を見る悟浄の顔は曇り硝子なので、見えない。
したを向いているところを見ると、泣いているのだろうか・・・
「悟浄・・・」
「わりぃ・・・ちっとでてってくれねぇ?」
「・・・わかりました」
少しだけ考えたが、八戒は悟浄の言葉に従うことにした。
「また来ますね」
「あぁ・・」
扉を静かに閉めると、悟浄がベッドを殴る音が聞こえた。
「すみません、悟浄・・・」
小さく扉に向かって再び謝ると八戒は自分の部屋に戻ることにした。

2000 11/14 written by ZIN
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